21.8.09

クロアチア滞在レポートperformance2

5-2 パフォーマンス作品

We are Elegant, Staglinec

それは、もともとインドネシアの村ゲムブラーガンに住んでいる一人の女性のアクションである。2007年、その村で行われたアートイベントに参加したわたしは、村を歩いて、人々と話した。アジアではよくあるスタイルの村で、家々が集まった外に田んぼが広がっていた。わたしは、通訳の学生と歩いて、「21世紀に相応しいエレガントなアクションとは?」と聴き、見せてもらいスケッチした。そのうちの6つを、村の墓地に集まった人々と行い、写真におさまった。このうちに1つが、「My land, Staglinec」の告知として新聞に載った。私は、シュタグリネツでも同じくインタビュウをしてまわり、シュタグリネツの「エレガント」をみつけようと思っていた。だが、それはかなわなかった。「村」が、わたしが知っているようなアジアのものとはとてつもなく、違っていた。皆、扉をしっかり閉め、女性はひとりでは出歩かない。村を訪れる外国人や都会の人々と、立ち話をするようなムードではなかった。農業地域は、共産主義の管理社会が強く残っているのではないかと思った。わたしは、あきらめた。
 
フェステイバル当日。午後4時から始まって、終わるころには、午後8時30分をまわってきた。雨はやんでいたけど、暗くなり始めていた。観客たちはどれほど、疲れていただろう。だが、終わりに近づくにつれて、私は「もしかしたら、できるかもしれない」という気持ちになってきた。
 インドネシアの女性の考えたアクションをひとつだけ、その日の観客とともに行うということ。プログラムが終わった。ピノの終了の挨拶があと、わたしはヴラスタを捕まえて「あれをやってもいい?たった1つだけのアクションだから」と聞いた。ヴラスタはにっこりして、やりなさい、と言ってくれた。わたしは、さっそく大声を張り上げて「Everybody ! I need your help! Please help me!」とわたしは叫んだ。疲れているはずの観客たちが、好奇心いっぱいの顔になった。ぞろぞろと集まり始めた。わたしは脚立の上に上がって大声で観客に説明した。もう既に夜になり始めていて、とてもわたしのカメラでは映りそうになかったので、「カメラお願いします!」と叫ぶと、ヴラスタはうれしそうに「サキコ!見てご覧!」と、小屋の2階の窓を指差した。そこにはテレビ局のカメラが既に上ってスタンバイしていた。なんというチームワーク。
 私は脚立を降りて、皆の最前列になって、アクションを指示した。そして多くの人が、従ってくれた。「We are living in the 21st century. We are elegant. We are not aggressive anymore. We can believe our peaceful future!」とわたしは叫んだ。みんなに聞こえたかどうかわからない。ところが、頼みもしないのに、「お〜」という不思議な声が皆から上がった。わたしは、とても驚いた。観客は、わたしの意図を理解してくれたのか? それとも、わからないなりに、楽しんでくれていたのか。わたしが考えた以上のことになった。たった1つのアクションだけど、まるで、日本の一本締めのように、びしっときまった。涙が出そうになった。「この映像は、インドネシアの村に。贈ります!」と私は言うと、もう一回、「お〜」という声と拍手。














そのテレビカメラの映像はまだ届かない(多分届く)。多くの人が写真を撮っていたけれど、私の手元にはない。PAVESのシネイドが撮っていてくれたビデオ映像だけが今、手元にあるので、それから撮った画像をここに添付する。
 薄明かりの中であるが、明るい未来が見えるかもしれない。


下の写真はインドネシアでの『We Are Elegant』(2007)



















6.観客の反応

遠足のような感じで来て、長時間、小雨がちの会場で過ごす観客の体力と好奇心には、こちらが感心したくらいであった。メインのパフォーマンス『Wind from Sky』が終わって、会場に戻ると、にこにこして話しかけてくる人々に囲まれた。タイトルが提示されていたこともあって、「コンセプトが明確で、余計なことをいれないパフォーマンスがわかりやすくて良かったわ」という若い女性、演劇をやっている青年は「映画のカットのひとこまひとこまの動きを見るようで、面白かった」というのは、わたしがゆっくり南から北への一直線の動きをしたからだと思う。日本映画ファンだという年配のアーティストは、「動きのひとつひとつに、オズの映画で見た日本人らしさを感じて良かった。」という感想。俳句、禅といった観点から、内容を深読みしようとする人々も見られた。『We are Elegant』は、ともに興奮して終わった。「なぜ、アクションはひとつだけだったの?皆はもっとやりたかったのが、サキコにはわからなかったのか?」とリベラに言われた。未来を全く期待していないと言いながら、毎日、会場で楽しそうに働き続けていた、リベラに作品は捧げたい。