6.6.12

アーティスト・ランのプロジェクト(1)PALS interview



この4〜5月のわたしの活動で、スエーデンとオランダに滞在したが、その旅の間、お世話になったディレクター(オーガナイザー)たちにインタビューしてきた。私の興味のポイントは以下の3点。
  1. アーティストが企画すること、アーティスト・ランということの意味。 
  2. 教育活動が常に加えられているという最近の傾向。
  3. パフォーマンスアートの魅力。



PALS(パフォーマンス・アート・リンクス)

 今年が、その第1回であるストックホルムのパフォーマンスアートフェスティバル。デニス・ロマノウスキーDenis Romanovski、ラビサ・ヨハンソンLovisa Johansson、エリック・ヴィクストロインErik Wijkströmの3人のアーティストたちにより企画された。期間は、2012年4月17日〜22日。
 デニスは、私が2003年にベラルーシの首都ミンスクでのパフォーマンスアートフェスティバルで会って以来である。ミンスクには、Navinkiというパフォーマンスアートフェスティバルがあり、彼はそのオーガナイザーの1人だった。そして、2006年に、彼はストックホルムに移住した。そして、新しい仲間を作り、たった6年で、フェスティバルを立ち上げた。そのたくましさに私は、すっかり脱帽。今回会った時、まず、おめでとうを言った。その間、私は何をしていた?
以下のインタビューは、PALSのフェスティバルが終わった翌日の4月23日に、デニスと行なった。途中からエリックが加わった。デニスは、いつもクールで、笑顔以外の感情を見せない人なのだけど、インタビューの書きおこしのために、ビデオを何度も再生して彼の言葉を聞いているうちに、その静かな語り口の奥の秘めたる情熱に気づき、私は、すっかり驚いてしまった。彼が「それなしには生きてこれなかったかもしれない」こととは何であろうか?



…….ストックホルムでは、このところ、パフォーマンスアートが盛んになってきたようですね。理由は何だと思いますか? 
デニス Denis Romanovski
デニス: いくつかの要因があります。まず、政治的に保守化して、助成の予算が減り、お金のかかる展覧会がやりにくくなってきていますが、パフォーマンスアートは低予算で、企画できるということがあると思います。それから、2年前にスェーデンのフルクサスについての本が出版されました。それがきっかけで、アート理論家やキュレーターたちが、パフォーマティビティ、インタラクションというトピックについて、興味を持つようになってきました。そして、いわゆるメジャーの展覧会でも、オープニングにパフォーマンスアーティストを呼ぶことが増えてきました。なぜなら、ハプニングやちょっとしたスキャンダラスなことは、一目をひき、人を集めます。しかし、この場合、やはりエンターテイメントやスクペクタルなものになりがちです。むしろ、より重要な要因としては、2006年から、ストックホルムで「Super Market」と言う名の、アートフェアが始まったことかもしれません。このフェアは、ノンコマーシャルです。アーティスト・ランのプロジェクトやアーティスト・ランのギャラリーが集まり、当初は、アートマーケットではないからと、「Mini Market」という名で、始めました。そして、国内外からグループが参加し、大成功をおさめたのです。それで2年目からはSuper Marketという名前に変わりました。このフェアで、昨年、私たちはパフォーマンスのプログラムをオーガナイズしました。そこで、40人のスェーデンのパフォーマンスを紹介し、たくさんの人に見てもらいました。この企画が、パフォーマンスが盛んになってきた大きな理由の1つだと言って良いと思います。

------PALsはどのように設立できたのか、その経緯を教えて下さい。
デニス:その年は、それ以外にも、私たちは「No Budget Performance」という名のイベントを6回企画しました。予算はないけれど、参加したいアーティストたちには、自由にやってもらい、私たちはそのパフォーマンスのアレンジメントを行ないました。ストックホルムには、少ないながら、あちこちにパフォーマンスをするアーティストが出てきたのですが、皆、別々の活動をしていました。それらの人々をつなげたいと思ったのです。ヨーテボリやフィンランドのアーティストたちが参加しました。そうした経験を経て、私たちは、今回の国際的なパフォーマンスフェスティバルを開催する準備をしていました。

------パフォーマンスフェスティバルの開催は、社会へ、どんな貢献ができると思いますか?
デニス:まず、フェスティバルそのものが、社会へのデモンストレーションです。政治的なアクションでもあるのです。それから、具体的には、私たちは、教育面に力を入れました。パフォーマンスアートは、日常の生活でしていることと似ていますが、そのあたりまえの生活を一旦止めて、違う角度からの視線を持つ、良い機会です。パフォーマンスアートは、オルタナティブなコミュニケーションの方法を提供します。私達は、スェーデンだけでなく、フィンランド、ノルウエー、ドイツ、ポーランドなどでパフォーマンスを教えている先生たちに来てもらいました。あちらこちらの学校のアートのクラスとクラスに橋をかけ、生徒と生徒をリンクしました。フェスティバルは6日間で、そのうちの最初の3日間はワークショップでした。学生だけなく、社会人も参加しました。さらに、フェスティバルの最後の日は、12時間のフリータイムとし、生徒たちは、アーティストと混じって、自由な方法で、作品を発表しました。プロのアーティストたちと、同じ空間で、同じ状況で、作品をつくり、同等に話すのは、とてもいい経験で、一種の学校でもあったと思います。そしてまた、アーティストにとっても助けになります。若い世代の存在は、先輩のアーティストにいい効果があります。子どもたちは、親たちをしばしば、叩きますね。子どもたちが近くいれば、先輩のアーティストは、自分の作品に責任を感じるでしょう。

-----どのようにアーティストを選びましたか。
デニス:パフォーマンスアートのネットワークの中で、会った事のある人たちを選んでいます。他のアーティストとのつながりを持って、アクティブに活動しているアーティストです。そして、さらにリンクを広げて行きたいのです。半分がスエーデンからで、半分を外国からというバランスをとっています。気持ちとしては、もっとたくさんのいろんなアーティストを呼びたいと思っています。選ぶのは辛い作業ですね。

----あなたは、リンク、コネクトする、あるいは、ばらばらである、と言う言葉をよく使いますね。それはあなたにとって、特別なキーワードなのですか?イベント名にあるLinksというのは、どんな思いがこめられていますか。
デニス: パフォーマンスアートのフェスティバルは、人間ベースのネットワークがベースです。なぜなら、パフォーマンスアートの作品はアーティストに直接来てもらわないと成り立ちません。アーティストたちは、参加しながら、旅をして、ネットワークを編んでいます。私たちは、まず、スエーデンのアーティストたちをリンクすることから始め、彼等を、国際的なアーティストのネットワークに紹介しようとしたのです。人と人とをつなげるのは、すてきなことですよね。経験ないですか?誰かに会って、それはとても素敵な人だったので、そうだ、この人をあの友達に紹介しよう、きっとマッチすると思う、みたいなこと。私の経験で言えば、すばらしいアーティスト、すてきな人たちに会うと、エネルギーを感じ、私自身が、生き生きとしてきます。そして、そのこの経験が、私の人生を、どれほど、助けてきたたことかと思うのです。たぶん、私は、それなしには生きてこられなかったでしょう。
エリック Erik Wijkström
エリック:そう。誰だって、誰かを捜しているのではないでしょうか? 自分とアイデアの似た人がどこかにいるかもしれないと。 それをやめてしまったら、一人で固まって、世界の中で孤立してしまいますよね。それに、とても違うタイプの人に会うのも、価値のあることだと思います。知識も得られるだけではなくて、それをシェアしあえれば、もっと豊かになれます。

------次回のフェスティバルで発展させたいことはありますか?
デニス:同じことを続けていって、ルーチンワークにはしたくはないと考えています。それでは、まるで、職業みたいになってしまいますから。私たちは、常に実験でありたいと思っています。そして、様々なトピックのアイデアを集めて、さらに、話題となることをしたいですね。

……..今回の会場はとてもよかったですよね。
デニス:そうなのです、ここ、Fylkingenフィリキンゲン)には、200人の素晴らしい会員がいます。実験音楽がベースのスペースです。ちゃんとしたオフィスがあって、スペースがあって、倉庫があって、カフェがある。理想的です。1930年代に設立された、歴史あるライブハウスなのです。私たちはフィリキンゲンのメンバーにも参加を呼びかけました。興味があったら、出演しませんかと。そして、4人出演してくれました。
E:ツアー型にしたらどうか、というアイデアもあります。
D:ラビサも含め、3人でよく相談し、次のフェスティバルを考えたいと思います。
ラビサ Lovisa Johansson