15.2.12

報告:パブリックスペースはどこにある


少し日にちが経ちましたが、1月24日に、太田エマさんと、おこなったワークショップ「パブリックスペースはどこにある?」のご報告と、写真などをアップします。

会場である、amuというスペースは、「アートリテラシー入門」や「アートという戦場」などの興味深い本を編集出版している、フィルムアート社と同じ系列です。恵比寿駅から徒歩10分くらい、たぶん、とても新しいスペースです。今回、ここでイベントをするように企画してくださったのは、アート&ソサエティという、パブリックアートの研究センターです。なかなかのプレッシャーで、準備には結構緊張しました(笑)。おかげで勉強になりました。感謝です。

まず、ワークショップとしては、パブリックスペースという言葉の意味を定義しなくてはならないかもしれません。しかし、実際のところ、それは使っている人や団体、社会、地域によって、違って来ているのが現実のように思います。定義を論じるのは私たちではない、と考えました。ですから、むしろ感覚的に人々が感じていることを意識する/させることが「アート」によるワークショップの意味なのではないかと思いました



さて、段取りとしては、

まず、イギリス出身のエマさんが、パブリックスペースの起源や、イギリスの状況。
エマさんのプロジェクトであるディスロケイドのコンセプトとこれまでの作品のいくつかの紹介。
わたしがわたしの作品の中で、パブリックスペースで行なったものについての紹介。
ワークショップ1と2。

発表とリフレクション。


まずは、エマさんがイギリスのパブリックスペースのことを話しています。ハイドパークのスピーカーズコーナー。

さて、次は、私の1992〜2012年の間にパブリックスペースで行なった作品の紹介です。サイトスペシフィック性ということで、1991年にクリストが行なったアンブレラプロジェクトの説明の後で、この1992年の私の初めての作品「TOPAZ」(シンガポール)を紹介しました。
用意した全ての内容は以下の投稿にリンクがありますので、ご覧下さい。パブリックスペースについて考えるためのレクチャー資料でもあります。


以下は、その中からワークショップへ直接つながる説明です。

用意したPowerPointのページの中で、たぶん、今回一番大事なメッセージです。


これは、銀行ATMで昼寝をするアクション「Best Place to Sleep」の説明として用意しましたが、ワークショップへの提案となっていると思います。

以下、ちょっと突然感があるかもしれませんが、デモの話になります。ワークショップのネタのために、話を持って行きました。

昨年、バンクーバーで遭遇したデモ行進です。この時に、プラカードというものが、なかなか、便利なことに気がつきました。写真では、プラカード以外の方法もありますね。貼紙の「GentriFUCKation」ですが、元の単語は「Gentrification」で、高級化、つまり、高級住宅化反対ということになります。

その一月後(10月)に、世界規模で、Ocupy streetのデモが盛んになりました。インターネットの、特にFacebookを通したネットワーキングが話題になりました。しかし、現場ではやはり、プラカードです。




パブリックアートは、必ずしも、通行する人へのサービスでなくても良いと思います。パブリックをテーマとした作品というのも、それを考える上で意味がある。



<以下、ワークショップ>

ワークショップ1。
パブリックスペースとはどこか、パブリックスペースにはどんな人がいるか、という2つのシンプルな質問。

答えを、隣の席の人と相談していただきました。いい雰囲気です。

ワークショップ2
今度は3人組になっていただきました。そして、具体的な「パブリックスペースにいる人たち」の立場を選んで、その人たちのパブリックスペースに対する考え、主張、思いなどを想像し、それから、それを、プラカードで表現していただきます。皆さん、とても、楽しそう。お互い知らない人同志というチームが多かったと思います。


さて、発表です。7組ともなぜか、パブリックスペースでの「マイノリティ」な人々の立場を選んでくださっていて、正直びっくりしました。私の作品のプレゼンの印象が影響したのでしょうか? それとも、パブリックスペースを必要としているのにも関わらず、疎外傾向にある人が、マイノリティに多いという解釈なのでしょうか?とても、興味深いことでした。

「やくざ」チーム。「求ム!! 一般化! 裏のパブリックスペースを守っているのは俺たちだ」

「変質者」チーム。字がよく見えないですが、「キケン!つかまえてください」と書いてあります。

「視覚障害者」チーム。「1%弱者にもパブリックスペースを!! Come with Us!! あなたたちも、わたしたちも幸せになりましょう。」

「ティッシュ配りチーム」です。「ありがとうを下さい」

もっともやばいチーム「裸の人」。「裸になりたい!でも捕まりたくない!こっち見るな!」


「赤ちゃん」チーム。場所はショッピングセンター。「早く帰りたい」

「失業者」チーム。「次はお前だ!!」
皆さん、ありがとうございました。

最後のリクレクションの時間。参加者の方のおひとりが、「パブリックスペースがなぜ必要か、何の目的をもつべきなのか、の議論が必要である」とおっしゃっておられました。


スペースのディレクターであり、フィルムアート社の編集長でもある津田さんが最後に〆てくださいました。ワークショップは、時間オーバーしたし、かなりバタついてしまったので、おこられないかしらと心配していたのですが、にこにこして、「面白かったですよ」と言ってくださって、本当に良かったです。確か「インドみたいだったよ」とおっしゃったように記憶しています。インド?