木曜の午後は、ディレクターも含めたミーティングになったが、彼が長く話したことの通訳がほとんどなされず、アーティストたちが不安になる。スタッフいわく、たいしたことを彼は言ってはいないと。ただ、わたしたちがあまりに疑問を示したので、夕方、スタッフのヤンユンとカフェで話すことになる。たぶん、スタッフたちも彼を理解しにくいと思っている感じがする。彼はアーティストゆえ、あまり考えを話さないタイプなんだと。ひとつ伝わったのは、この学校やそのコミュニティの特徴を捉えてほしいというということ。それで、カフェではそれについて、みなで意見交換する。
金曜はいつもミーティングするプラットフォーム仁川のアーカイブ(旧日本郵船のビル)で、ワークショップを報告しつつ、少しずつ、校門のプランに移行して行く。ディレクターは欠席。机上でいくら話してもしょうがないから、小学校の周辺を歩いて、大人たちにインタビュウしようと、山岡提案。でかける。なかなか良い成果。かわいい男の子(3年生)が、うろうろしているのを見つけて、彼に家に連れていってよと頼んで、お母さんに会ったり。彼の両親は結婚してこの町に来たらしい。父は港の関係で働き、母は学校事務の仕事。学校は歴史があるし、良い学校だと思うけど、生徒が年々減っていて、町自体高齢化し始めていると、お母さん。また、生まれたときから、ずっとその町に住んでいて、卒業生だという60歳くらいに、ゲイっぽい額縁屋さんにも会った。毎朝、ジョギングをするために学校へ行っている。彼のような人たちも校門のユーザーだ。現在82歳だが、6年ほど前に引っ越してきて、元日本人の家だった家を買って住んでいるというおばあさん。日本人最高!と言われた。複雑。彼女は、ボランティアで、校門前で子供が安全に帰宅できるように、警備として、働いている。みどりのおばさんみたいな感じ? かなり、プライドを持って働いている様子。ここで何が危ないかというと、なんと言っても車。となりのマンションの駐車場の入り口に接している。
この後のミーティングで、ディレクターの意向がわからない、もっと彼と話したいと、わたしは言う。まるで、姿の見えないボスみたいと言った。それで、スタッフたちは彼に電話して、翌日、会うことになる。
翌日のディレクターとのミーティングは、連絡もなく、キャンセルになり、わたしはむっとする。ところが、どうやら、単に、前の晩飲み過ぎて、起きられなかったというだけのこと。で、サービスなのか、昼にふぐ料理屋でごちそうしてくれた。おいしかったです。そのあと、喫茶店で、わたしの門のプランをスケッチブックを見せて、提案してみる。具体的なものを見たせいか、彼がかなり、ポジティブになってきた。実は、彼も不安だったのだと思う。いろいろと意見交換。予算も聞いたし、壊せない外壁の箇所のことを聞いたり。実りがあった。それで、この日は終わる予定だったが、アーティスト3人で夕食をとっていたら電話があり、彼の招待で、カラオケバーに行く事になった。トルコから来ている若いイレムは、カラオケにとても行きたかったので、とてもご機嫌。ディレクターも何曲も歌っていた。その合間に「自分は皆さんを信じていますから、心配しないで、やってゆきましょう」てなこと、胸に手を当てて、前に出すアクションをしながら、何度も言った。若いスタッフたちが、一生懸命、私たちをつないでくれたのだと思う。スタッフの3人娘は、30歳前後。優秀なだけでなく、やわらか頭で、ハートフル。「やはらか頭でハートフル」というのは、どの世界でも若者の役割だと思う。年とってくると、知識や経験は増えるけど、痛い経験の積み重ねもあって、世界を狭く見てしまう傾向にある。
わたしのプランである「HUB port forest」の方向性は、ディレクターはおおよそ、気に入ったらしい。単なる通過点としての門ではなくて、待ち合わせ場所としての門というのは、彼が前に手がけた門で行っており、私のは、それをアップデートしようアイデアである。予算も増えたし、彼自身も一歩も二歩も進めたいらしいから。今回は、コミュニケーションでとどまらず、発信地、あるいは、何かクリエイティブなことが起きる場所として、定義しようと思う。アジアのハブポートであるだけでなく、最も大事な野鳥野生息地であることを、ともに表したい。特に、この小学校は歴史的にみても、地域の広がりとしてみても、多様な民族、多様な世代が共存している、というところに特徴があると感じたから。単に、コミュニケートする場所でなく、発信する場所とするなら、もう少しだな。ハイテクノロジーの特徴である、ユーザーがアレンジし直すことができる、という要素をなんとか、入れたい。ワークショップで、生徒に提案した「協力cooperative」という要素。それから、より現実的な問題として、交通用の多い現在の門は車両専用にして、別にピースフルな門をつけたらどうかと言う案もある。
わたしって、割とこういう仕事に向いているみたいで、自分でもちょっと驚いている。
今日は完全なオフ。寝坊して、とてもリラックスしている。
以下、いかにもな写真ですが、教室で子供たちと。
額縁屋のおじさんにインタビュウするヤンユン。
以下は、わたしは勝手に桜の切り株ではないかと、想像しているもの。元日本人学校であったなら、桜が植わっていてもおかしくない。この切り株も、うまく使ってデザインしたい。