6.7.09

老いと死の作品、映画

以下、「美術観察学会」のMLに投稿した文。いろいろな人が、会員になっているMLで、書き過ぎかな〜と思ったけど、書いてしまった。

ベネチアビエンナーレのやなぎみわさんの作品。もちろん、プロフェッショナルとしては、すばらしい。わたしなど足下にも及ばない。だけど、観客としては、意見をもってもいいと思うし、そういうことにさらされてなんぼの、世界の人ではないかと思う。また、わたし自身にも、帰ってくる。もしかして「そんなレベルで見ていたのか」ということになるかもしれない。でも、背伸びも、かがみもできないから、しょうがない。自分の感覚を確かめるために、観察記録は書いておきたいと思いました。だめかな。


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クロアチア、ベネチアなどに行って参りました、山岡です。


『ART iT』新サイト。さっそく拝見して、ちょうど、気になっていた、やなぎさみわさんのインタビューを読ませていただきました。

そこにハリウッド映画の「ベンジャミン・バトン」のことが触れてあり、わたしと全く違う感想なので、面白いと思いました。これは、やなぎさんの作品に関連することなので、遠回しのようですが、このことから書きますね。

私の感想を先に書きます、........けっこう期待して見た映画(帰国の際の飛行機の中のサービスで選んだ)なのだけど、あまりに表面的なドラマで、少々、がっかりしました。

老いや運命について、見た目のことばかり、老いは不幸で、あきらめなくてはならないもの、といった印象。台詞がどうであれ。アイドル映画なんだな〜と思ったが、ブラピが、すてきだったシーンはほんのわずかで(笑)、なんか中途半端。

フィッツジェラルドの原作はどうなのでしょう。

前半の、子供の心で、老人の外見の時、顔に何かはりつけて、ごてごてになっていて、老人の魅力である、そぎおとされている=失われている、生の潔さみたいにみえるもの、でありながら、凝縮されたどろどろした欲望がほの見えるみたいな、独特の、感じではないですよね。単に、皺と、シミが皮膚の表面に付着しているだけ。ブラピなら、しぶ〜いおじいさんになると思うのだけど。でも、技術はわたしは、とやかく、言わない。

醜い、ということだけを表している。それに、喪失は、不幸だけではないでしょう? 一方、若さとは体力があって、記憶力がよく、美しいという、こちらも、ステレオタイプ。

それから、後半、外見が子供になった老人の、心の複雑さをどう表現するのかしらと楽しみにしていたのに、ベンジャミンは痴呆症になっていて、感じとしては、記憶喪失になった少年のようでした。まあ、ハリウッド映画の限界かな〜と思ったり。

老人って、まだまだ、未開拓な分野なのかしらね。このごろ、都合があって、様々なご老人を観察する機会に恵まれますが、ぞっとするほど沈痛な場合もあるし、とっても、複雑なですよね。年代や病気によって、様々な段階があるし。あんまり、一面的だとつまらない。

一方、やなぎさんは、「ベンジャミン・バトン」を、評価しておられるようなので(技術的な面を、なのかもしれませんが)、ここにおいても、「老いと死」について、彼女は、わたしとは、かなり違う感覚の人なのだなと、つくづく思いました。


あるいは!!

いっそのこと、外見のことだけをすべてとして見るのも、クールなのかも!それも思想でしょう。内面など、妄想と想像でしかないと。いや、しかし、わたしも、外見のことを、言っていると思います。


ベネチアで拝見した作品について、わたしはあれこれと、考えていたところなので、読ませていただいた面白かったです。作品のアイデアがどうわいてきたのか、影響を受けたことなどを知り、ちょっと先入観をもっていたのを申し訳なく思ったりしましたが、最後の方で、「ベンジャミン・バトン」の感想を読み、私がちょっと感じたことは、先入観ではなかったと、あらためて、わかりました。作品を通した場合と、言葉を通した場合の、ずれも、また、芸術のうち。「落ち」は、ない方がいい。


ベネチアには、わたしは、船の都合で5時間しか(クロアチアから船で参りましたが、その後、2日間、決航なので、日帰りするよりなく)いなかったので、本展示場であるジャルディーニ(Giardini)と、アーゼナルの一部だけ見ました。

やはらかな遊びの精神のある作品が多かったようで、印象に残りました。痛烈なことも、肩の力を抜いて、優雅に、表している。やなぎさんは、会場をサーカスのような移動民の場所をとらえていたようですが、他のパヴィリオンでは、もっと日常の中にある、となりドアを開けた場所という捉え方をしていた作家が多かったのが、興味深い違いでした。どうしてかな。


ビエンナーレ。疲れるかな〜と思っていましたが、なんのなんの。逆に、世間の暮らしのセンスの、疲れを取ってくれました。社会や人々の先入観と戦うのが、私の日常ですから。まあ、金持ち文化をありがたがるのも、我が身を振り返ると、どうかと思ったりもしたり........。それでも、想像力は想像力。ですから。わたしは、楽天的です。

Kさんおすすめの、スエーデンパヴィリオンは、わたしの友人も推薦しており、確かに、こにくい演出。楽しかったです。他にもいろいろ、思ったことが、頭の中で、まだ、爆発しております。

また、あらためて、感想を書くつもりでいます。たぶん。


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ちょっと、作文が雑だなあ。



山岡佐紀子