最近の読書。
猪瀬直樹「空気と戦争」を読む。勉強になる。先の大戦の時の、石油の需給計画と戦争開始の決断時の経緯。猪瀬氏の東工大のレクチャーをまとめたもの。政治は、すぐ隣で行われていると感じさせる臨場感。細かい事の丁寧な積み重ねの途上で、何が原因でそれがずれていくのか、検証されている。それは「空気」。国民だって責任がある。戦時中も現代も、同じようなことが行われてしまうのだ。流されず、冷静な意識を持たなくては。私達が毎日していることもこういうことの集積の一部であろう。こういうものはもっと読みたいと思った。
カズオ・イシグロの小説「私を離さないで」。臓器移植のためのクローンとして生まれて来た子供たちの日々を淡々と描く。せつない物語なのだが、センチメンタルには決してならない。全体にトーンが変わらない、緻密な文章。近未来に起こりうるかもしれない人類の差し迫った問題提起がきちんと文学にもなっている。激したものより、こういう冷静な形の問いかけ方に、わたしは共感する。