26.6.08

城壁の上の風

ワルシャワの、元々、地方の小貴族の城で、少し前まではポーランド陸軍病院だったと言う美術館でのパフォーマンスは、ミツビシのエアクラフトつまりジェット機のプロモーションである。もちろん、ウソ話だが、わたしは、ウソ話というアクションをしばしば行う。特殊なケースのセールスなのだ。飛行機は、随分、たくさんの予約をいただいた。写真はおみやげということで売りもした。(日本円で10円ぐらい)

その時のことをイスラエルのアーティスト、アディーナが書いてきてくれた。
「サキコ、あなたは、クレバーだわ!あなたのパフォーマンスは驚いたし、笑ったし、啓蒙的だった。まず、あなたの様子。エア・スチュアートみたいな格好で、壁の上に座っている。わたしたちより、より高いところ、空に座っているみたい、子供かクラウンみたいに。くしゃみをこらえているのは、風をおこそうとしているみたいだし、ジェットガズに苦しんでいるようにも見える。そして、あなたのは話し方(くしゃみをこらえている声)は、おかしな音のミュージックのようだった。ジェット機を売るというアイデアは、あなたが話していたように、まったく偉大なことなんではないかと思えてきた。」

タイトルは、『城壁の上の風』というようなものだったと思う。ミツビシにこだわることもないと思っていたけど、ワルシャワでもやはり、だれもが日本製の電気製品を持っていると聞いたので、そうした。くしゃみは、胡椒をすすることで、でそうで出ないと言う状態にした。(くしゃみは出てもいいけど)風を起こすことと、飛行機のジェットエンジンというかけ離れたものにある、でも共有できるイマジネーションを楽しむ。「華麗に飛ぶ」という人類最大のドリームと、「くしゃみ」という卑近な身体の痙攣を、強引につなげた。思いがけず、皆さんに喜んでもらえて、うれしかった。ロシア製の軍用機を長年買わされていたはずの、ポーランド軍は今はアメリカから買っている。そこで、それはやめて、日本製に切り替えてくれ、と言うのは、シニカルなジョークだ。笑ってくれた。(実のところ,知る人は、わたしのくしゃみの、ど威力を知っているんだけどね。)

ミツビシは、私企業だけど、しょっぱなから、国家のプロジェクトとともに、やってきたので、(軍艦、戦闘機など)わたしには、スペシャルな意味がある企業である。

このパフォーマンスは、わたしにとってまったく、新しい形だし(しゃべりばかりで)、それをポーランドで発表できた事も(英語です)、そして、観客が受け入れてくれたことも、さらにうれしいかった。アイデアのもとは、単に「息」だったのだけど。命のことを考えたかった。

写真では、タオルを鼻にあて、くしゃみをこらえている私と、飛行機の写真をながめて、自分のほしいものを選んでいる観客。